「びわ湖の謎を解く」

(三田村緒佐武)

★長寿湖(古代湖)びわ湖の特徴とは何か?
 長寿湖の条件は、
①構造・沈降湖である、
②富栄養化が穏やかである、
③貧栄養湖である、
④物質循環が完結しでいる、
⑤人間活動の影響が無い、         ことである。
びわ湖はこの条件を満足するかあるいはきわめて近いか、びわ湖の現状を探る。

1)成因を探る -びわ湖は構造湖か-
①びわ湖のおいたち            
 古びわ湖と現びわ湖は異なる。現びわ湖は40~100万年前に誕生した。
②びわ湖の成因
 現びわ湖は構造湖である。
③長寿湖は固有種が多い。

  生態群  琵琶湖は、世界でも有数の古代湖として知られています。
バイカル湖やタンガニーカ湖に次いで、世界で3番目に古い湖です。

 現在の琵琶湖は大昔には今の位置にはなく、三重県の旧大山田村(現在の伊賀市)にありました。

その古琵琶湖が、徐々に移動して(その間消滅を繰り返し)、現在の琵琶湖の形に到っています。


<琵琶湖の変遷>

①大山田湖(約400~320万年前)

②阿山・甲賀湖(約300~250万年前)

③蒲生湖(約250~180万年前)

④堅田湖(約100~40万年前)

⑤現在の琵琶湖
  
       
 400~300万年前 断層活動により上野盆地周辺に窪地の水塊が多数誕生した。これを大山田湖と言う。堆積化石から亜熱帯性の気候と考えられる。  300~250万年前 大山田湖が消滅したのち、現在の三重・滋賀県境付近に湖盆が誕生した。阿山湖、甲賀湖と言う。水口まで広がる。  250~180万年前 続いて、湖南・湖東に小湖沼・湿地が誕生した。蒲生沼沢地群と言う。沼沢地は洪水により移動した。メタセコイアが繁茂する。  100~40万年前 氷河期に現在のびわ湖の位置に湖盆が誕生した。堅田湖と言う。湖周辺はシガゾウなどの哺乳類が、湖は多くの魚介類が生息した。

<湖沼学における湖の定義>
<湖の遷移>
1)湖とは、ある成因によりできた窪地に、水を湛えて誕生したもの。
2)湖は、富栄養化して浅くなり、沼沢化したのち、陸化して一生を閉じる。
3)水系の窪地そのものが移動(水生生物も移動)した湖は、湖沼が移動した  とみなし、同じ名の湖沼名称を用いるが、他は新湖が誕生したとする。


<同じ湖沼とする湖>
● 同じ場所で、干上がったり、水溜まりができる場合(水系湖盆を含む)
 ⇒例:①火山活動による水の有無の湖.②砂洲の開閉による汽水湖.   ③生物活動が活発なときに出現する湖、など

<異なる湖沼とする湖>
● 水系の変動により、湖盆(たまり)場所が異なる場合  ⇒例:さまよえる湖「ロプノール」、三日月湖、内湖、古琵琶湖
● 気象条件などで近隣の異なった場所に誕生する場合  ⇒例:砂丘湖、氷河湖、三日月湖

<琵琶湖と古琵琶湖との関係は?>
琵琶湖、大山田湖、阿山湖、蒲生沼沢群の湖沼は、 独立した別の湖である。堅田湖を琵琶湖に含むかは学説が異なる。


2)湖沼遷移を診る -びわ湖は沈降構造盆地か、富栄養化が穏やかか
①びわ湖の古環境
 びわ湖の誕生を推定する。びわ湖は沈降構造盆地か?
②びわ湖は長寿湖
 長寿湖は固有種が多い。
③びわ湖の富栄養化
 富栄養化とは、湖沼遷移の動的ダイナミックスのプロセスことである。
④びわ湖盆の形態
 構造湖盆から長寿湖の特徴が診えるか。

   
 ★湖盆傾度(1.7%):湖底傾斜が穏やか
★湖盆容積の発達量(1.2):逆円錐形
★肢節量(2.7):湖岸線はやや屈曲
★平均幅/最大幅(0.47):細長い湖


⑤びわ潮の水収支
 長寿湖は、原則としで開放湖であり、水循環が健全でなければならない。


3)湖沼型を診る -びわ湖は貧栄養型湖沼か-
①びわ湖は中栄養湖
 人為的富栄養化により、貧栄養湖から中栄養湖に栄養度が増加して湖沼型が変わった。
②学習:透明度は何を測定しているのか?
 透明度は、水そのもの、溶存有機物、プランクトン、セストン(*1)により左右される。
 透明度から、水草、植物プランクトンの分布のおよそがわかる。
 湖沼型と湖沼遷移も推定できる。

*1セストン(seston

元来は濾別されうる粒子一般を指す用語であるが、生物学上では水中に懸濁する粒状物(suspended particle)すべてを指す


4)生態系を診る 一物質循環が完結しているか-
①学習:生態系とは何か? 
 生態系とは生物活性に伴う物質循環とエネルギーの流れの系である。
②びわ湖の物質循環
 びわ湖の物質循環は完結しており、長寿湖の条件を満たしているか?
 びわ湖生態系の物質循衆を探る。
③湖底堆積物とベントス(*2)
 びわ湖の湖沼遷移(自然的・人為的富栄養化)が健全かを、湖底堆積物の構造と機能(ベントス機能)から判断する。

*2ベントス(benthos)

底生生物とも言う。海洋・湖沼・河川などの水域にすむ生物のうち水底に生活する生態群。


5)びわ湖環境を診る ー人間活動の影響は小さいか-
①水塊変動を調べる
 水温構造は長寿湖の条件を満たしているか?
 びわ潮水の水温上昇は、深層水の貧酸素化の原因になる。
②人為的富栄養化を調べる
 植物プランクトン量が増加してきた。
③深層水中の溶存酸素が減少し、表層水中のpHが増加してきた。
 びわ湖の透明度値は中栄養湖に、溶存酸素とpHの鉛直分布は中栄養型へと湖沼型が変化してきた。
 このことは、長寿湖の寿命が長くはないことを示す。
④学習:pH値から何を知ることが可能か?
 pH値は水温により変化する。
 主要イオン成分の水質を調べるのか、光合成・呼吸を調べるのかによって測定方法が異なる。
 平均pHとほ何か。
⑤湖水の窒素とリン栄養塩
 栄養塩濃度の分布から判断すると、びわ湖の湖沼型は貧栄養型から中栄養湖型になった。
 長寿湖の寿命が短いことを示す。

6)長寿湖の再生に向けて -びわ潮流域に生きる私たちの責務-  
①人為的富栄養化の防止
 長寿湖・びわ湖を定められた寿命に戻すためには、人為的富栄養化がもたらす湖の老化を防止して、自然的富栄養化による湖沼遷移に戻し、湖の寿命に復元することである。
②びわ湖は問いかけている
 びわ湖は、びわ湖にしか造れない。人はその手伝いをするのみである。
③びわ湖復元の環境哲学
 偏見・知識を捨て、知恵で考え、びわ湖環境をありのままに観る・測る・診る。長寿湖の再生に痛けて、びわ湖環境をいかなる視点で学習して、研究すべきか。そしてその結果としての、長寿湖・びわ湖の再生に向けての環境観を醸成していくべきか?
 びわ湖は想像以上に多様な構造と機能がある。それが長寿湖を支えてきた。びわ湖環境を復元・修復する行動は、人のためではなく、びわ湖のため、いわゆる仏教でいう利他精神の行動である。

★私たち人類は、人類種の滅亡後も、草木にまで長寿湖・びわ湖を残す責務がある。
今、私たちの生き方が問われている!

琵琶湖は私たちに問いかけ続けている
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